森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
(だが公爵家に戻れば、久しぶりにエラの顔も見られる……)

 ポケットに忍ばせた包みをそっと確かめる。エラに似合いそうなネックレスを手に入れた。わざわざ買い求めた訳ではない。行商が来ていたときに、たまたま目にとまっただけだ。

「そういや、エデラー家が男爵位を王に返上したらしいっすね」
「なんだと? それは確かな話か?」
「あれ、エーミール様、知らなかったんすか? 今、貴族の間ではその噂でもちきりですよ」

 しばし呆然となった。いずれそうなるだろうと言われていたが、もっと先の話のように思っていた。無意識に服の上から包みを握りしめる。平民となった彼女に、これを渡す理由が見あたらない。

「エラが……貴族籍を抜けた……」
「ああ、そうか。それでフーゲンベルク家の家令の息子……ええと、マテアスでしたっけ? その彼と結婚したってわけっすね」

 何が「それで」なのかが分からなくて、エーミールは回らない頭でニコラウスの顔を見た。

「誰が誰と、何をしたって?」
「ですから貴族籍を抜けたエラ嬢が家令の息子と結婚を……」
「なんだと……! 貴様、ふざけるな!」
「べ、別にふざけては……」

 掴んだ胸倉を乱暴に離す。何も考えられないまま、エーミールはフーゲンベルク家へと馬を走らせた。

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