森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
     ◇
「エラ様、結婚してからますます綺麗になったなぁ」
「マテアスもうまいことやったよな。くそ、なんてうらやましい」
「でもエラ様のあんなしあわせそうな姿を見ると、マテアスのこと恨めないなぁ」
「オレは賭けは一点張りだったから、マテアス様様だよ」
「ちぇ、オレもマテアスに賭けとくんだった。グレーデン様、意外と情けなかったしな」
「だから言ったんだ。グレーデン様は何より家を重んじる方だって。下位貴族のエラ様を妻に迎えるはずもないさ」
「それにしたってもっとこう、あるだろう? 次期家令とはいえ、使用人のマテアスに負けるなんて、不甲斐ないと思わないか?」
「ばっ、しぃっ! おまえたち不敬だぞっ」
「なんだよ、今グレーデン様は騎士団に行っててここにはいない……って、えええっ!?」

 振り向くとすぐそこで、鬼の形相のエーミールが立っている。負のオーラを(まと)わせる姿に、誰もが口を閉ざして固まった。
 そんな使用人たちをぎりと睨みつけると、エーミールは舌打ちをして(きびす)を返した。その背が見えなくなると、安堵の息が一斉に漏れて出る。

「あーあ、お可哀そうに」
「あれ、相当傷ついてるぞ」
「お、オレのせいじゃないだろ」
「でもお前がとどめを刺したんじゃないか?」
「ええっそんなっ」

 それからしばらくの間、主に使用人の男たちから、哀れみの視線がエーミールへと送られるのだった。

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