森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
     ◇
「あら、グレーデン様、ご無沙汰しておりますわ」
「キュプカー嬢、なぜあなたがここに……?」

 公爵家につくなり、侯爵令嬢のヤスミン・キュプカーと出くわした。しかも子爵家跡取りであるヨハン・カークと、仲睦ましげに寄り添いながら連れ立っている。

「あ、あ、あの、エーミール様、その、わたしとヤスミン様はその……」
「ふふ、わたくしたち婚約しましたの。それを公爵様にお知らせに行ってまいりましたのよ」
「ヨハンとあなたが婚約を……?」

 思わず眉をひそめた。ヤスミンはキュプカー家のひとり娘のはずだ。婿養子を取るという話が、以前から社交界には出回っていた。しかしヨハンは子爵家を継ぐ身だ。婿養子に入れるはずもないだろう。

従弟(いとこ)をキュプカー家の養子として迎えて、家を継いでもらうことになりましたの。その上で、縁故のご令嬢にお嫁に来ていただくことに。その方も優秀な方と聞いておりますし、ふたりで家を切り盛りしてもらえれば、キュプカー領も安泰ですわ」
「いや、だがあなたはキュプカー侯爵の唯一の子供だ。家を継ぐ義務があるのでは……」
「あら、グレーデン様は随分と古い考えをお持ちですのね。従弟だってキュプカー家の血筋の人間ですわ。わたくしが継がなくたって、何も問題ございませんでしょう? ね、ヨハン」
「あ、いや、その、オレもヤスミン嬢をつ、妻に迎えられるなど、まだ夢のようで……」
「もう、ヨハンったら。わたくしのことはヤスミンと呼んでと言ったでしょう?」
「そ、そうか、ヤスミン……それでだな、その、さっきから君の胸がお、オレの腕に当たっているんだが……」

 真っ赤になってわちゃわちゃとしているヨハンの腕に、ヤスミンがさらに胸を押し当てるようにしがみついた。

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