森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
     ◇
 食後、クリスティーナに誘われて、庭へと散歩に出た。
 ゆっくりとした足取りで、クリスティーナは石畳に歩を進める。その後ろをアルベルトがつかず離れずついていく。東宮でよく目にした風景だ。ヘッダだけがここにいない。そのことがリーゼロッテの気持ちを沈ませた。

(こんなふうに思っていると、きっとヘッダ様に怒られてしまうわね)

 誇りにかけて彼女は王女を守り切ったのだ。ヘッダがそのことを悔やんでいるなど、ありはしないだろう。

 ふとジークヴァルトの視線を感じた。やたらとリーゼロッテの足元を気にしている。自分が転ばないかとハラハラしている様子だ。
 足を痛めたクリスティーナが、自身の足で歩いているのだ。ここで抱き上げられてはたまらない。絶対に転ぶものかとリーゼロッテは、いつも以上に慎重な足取りになった。

「オエ――――っ」

 大きく羽をばたつかせ、白い塊が腕に飛び込んだ。勢いで数歩下がると、ジークヴァルトに背を抱きとめられる。

「マンボウ、あなたもここに呼んでもらえたのね」
「オエっ!」

 胸に抱いて見つめ合う。すると真後ろからジークヴァルトが、マンボウをひょいと取り上げた。見上げると口がへの字に曲がっている。そんなジークヴァルトにマンボウは「おえっ」と敬礼のポーズをとってみせた。

 不機嫌顔のまま、ジークヴァルトはマンボウをそこら辺に放り投げた。見事な飛翔を披露して、着地したマンボウがどや顔で振り返る。きりりとした太眉は健在だ。

「あら、マンボウはすっかりふたりに懐いたのね」
「わたくし、マンボウにはたくさん助けてもらいましたから……」

 (とら)われの神殿で、卵をもらったことを思い出す。きのこの鼓笛隊(こてきたい)を案内してくれたのもマンボウだ。あれがなかったら、リーゼロッテはあのまま飢え死にしていたかもしれない。

「さあマンボウ、いっぱいお食べなさい」

 東宮の庭でそうしていたように、クリスティーナは地面に穀物を()き始めた。他に鶏がいないせいか、マンボウは遠慮なしで(ついば)み始める。

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