森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「そう、たんとお食べなさい。もっともっと太って滋養を蓄えるのよ」
次から次へと撒かれる餌に、マンボウが次第に追いついていけなくなった。それでも期待に応えるように、こんもりと盛られた餌に向けて必死に嘴を上下する。お腹がパンパンになっても食べ続けるマンボウが、なんだか可哀そうになってきた。
「あの、クリスティーナ様……それはさすがにあげすぎなのでは……?」
「いいのよ。この冬は長かったでしょう? いざというときのために、ちゃんと肥え太らせておかないと」
「いざというとき?」
「ええ、雪で食料が尽きたら困るじゃない。非常食として太らせておくのは当然よ」
「ひ、非常食!?」
思わずマンボウを見やる。クリスティーナは食糧難の非常時に、マンボウを食べるつもりでいるのだろうか。
「お、おえっ……」
涙目になったマンボウの嘴の端っこから、餌がぽろりとこぼれ落ちた。
「でででですが、マンボウはフリードリヒ様から頂いた大事な聖獣なのですよね!?」
「そうだけれど、ただの鶏よ?」
「ででででも、マンボウはこんなにもクリスティーナ様のことが好きですのに。クリスティーナ様もマンボウに愛着はございますでしょう?」
「愛着? そうね、マンボウの鳴き声がないと朝が来た気がしないわね」
「そそそそうですわよね、ですからマンボウをお食べになるのはおやめになった方が」
「いやだわ、誰がわたくしが食べると言ったの。食べるのはアルベルトよ」
「は? なぜわたしが?」
さすがのアルベルトも呆れた顔をクリスティーナに向けた。
「わたくしは動物の死骸なんて食べないわ。葉物野菜だけで十分よ。最悪、わたくしはビンゲンだけでも生きていけるけれど、アルベルトはそうじゃないでしょう? 可哀そうなアルベルトのために、万が一に備えてこうしてマンボウを日々肥やしているのじゃない。有難く思いなさい」
「クリスティーナ……冬の備蓄は王城にも蓄えられています。そんなことくらいあなたも知っているでしょうに」
「すぐそうやって口答えして。ほんと、つまらない男」
クリスティーナは涼やかな声で笑う。そんな彼女を見つめるアルベルトの瞳は、とても穏やかだ。
次から次へと撒かれる餌に、マンボウが次第に追いついていけなくなった。それでも期待に応えるように、こんもりと盛られた餌に向けて必死に嘴を上下する。お腹がパンパンになっても食べ続けるマンボウが、なんだか可哀そうになってきた。
「あの、クリスティーナ様……それはさすがにあげすぎなのでは……?」
「いいのよ。この冬は長かったでしょう? いざというときのために、ちゃんと肥え太らせておかないと」
「いざというとき?」
「ええ、雪で食料が尽きたら困るじゃない。非常食として太らせておくのは当然よ」
「ひ、非常食!?」
思わずマンボウを見やる。クリスティーナは食糧難の非常時に、マンボウを食べるつもりでいるのだろうか。
「お、おえっ……」
涙目になったマンボウの嘴の端っこから、餌がぽろりとこぼれ落ちた。
「でででですが、マンボウはフリードリヒ様から頂いた大事な聖獣なのですよね!?」
「そうだけれど、ただの鶏よ?」
「ででででも、マンボウはこんなにもクリスティーナ様のことが好きですのに。クリスティーナ様もマンボウに愛着はございますでしょう?」
「愛着? そうね、マンボウの鳴き声がないと朝が来た気がしないわね」
「そそそそうですわよね、ですからマンボウをお食べになるのはおやめになった方が」
「いやだわ、誰がわたくしが食べると言ったの。食べるのはアルベルトよ」
「は? なぜわたしが?」
さすがのアルベルトも呆れた顔をクリスティーナに向けた。
「わたくしは動物の死骸なんて食べないわ。葉物野菜だけで十分よ。最悪、わたくしはビンゲンだけでも生きていけるけれど、アルベルトはそうじゃないでしょう? 可哀そうなアルベルトのために、万が一に備えてこうしてマンボウを日々肥やしているのじゃない。有難く思いなさい」
「クリスティーナ……冬の備蓄は王城にも蓄えられています。そんなことくらいあなたも知っているでしょうに」
「すぐそうやって口答えして。ほんと、つまらない男」
クリスティーナは涼やかな声で笑う。そんな彼女を見つめるアルベルトの瞳は、とても穏やかだ。