贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
───『この世界にはあなたと私二人だけ』

シェリルは視線だけで想いを語ってくる。僕たちが背負うものは大きい。ゆくゆくはこの国を統べる立場になる。楽しい事ばかりではなくて、苦しい事ばかり経験させてしまうかもしれない。それでも、彼女にはいつも笑っていて欲しい。僕は彼女を世界一幸せな女にすると誓った。

風がとても強くて雲が凄いスピードで流されていた。その雲が逃げていくように見えて例えようのない恐怖を感じる。

結婚式の最中ふと強い視線を感じた。
視線を感じた先を見ると真っ赤な礼服を着たフレデリックが僕たちを見て不敵に笑っていた。

結婚式が終わり感動の余韻に浸りたくて人払いをした。
緊張しながら一人湯浴みをしていると、突然浴室の扉が開かれる。

「無礼だ!」と叫ぼうとしたが、顔面蒼白の補佐官の姿を見て息を呑み押し黙った。

「オスカー王太子殿下、カロリーヌ様がお子様をご出産致しました。アメジストの瞳をした元気な男の子です」

浴槽から出ると浮かんでいた赤い薔薇の花びらが体にこびりついてくる。まるで自分の周りに強かに立ち回る人間たちが、僕とシェリルの幸せを邪魔するようで気持ち悪く感じた。
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