贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。

17.略奪婚(オスカー視点)

「オギャー、オギャー」
暗がりの中で赤子の喚き声がうるさい。足音や騒ぎ声が聞こえるが、この真っ暗闇でどう行動しているのだろうか。

一斉に城内の灯りがつくと、バロン帝国の騎士たちは消えていた。そこにいたのは赤子を抱いたカロリーヌ。

僕とシェリルの入場を告げる予定だった、扉の前の従者が動揺しているのが分かった。
廊下の向こうから僕の補佐官が走ってくるのが見える。耳打ちされた言葉に血の気が引き、今更全てが繋がった。

『結婚証明書が盗まれています』

昨日の結婚式で僕とシェリルは結婚証明書にサインした。その証明書は城内で保管していて、後日教会に提出する予定だった。教会に結婚証明書を提出し始めて僕たちは夫婦になる。

つまり、僕たちの結婚は未だ成立していない。
バロン帝国に「アベラルド王国の王子妃を略奪した」と抗議することができない。
シェリルの立場は王太子の婚約者であるが、一介の侯爵令嬢だ。

そして、今、披露宴会場には各国の要人が集まっている。花嫁を奪われたと主張したところで、僕の礼服とペアになった赤子を抱いた女が邪魔をする予定なのだろう。

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