贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
私は彼の腕の拘束からするりと抜けると、彼の手を引き部屋の奥へ進んだ。おそらく書斎だと思った部屋にあった机の引き出しを開け紙と羽ペンを用意する。
部屋の中は典型的な家具の配置をしていた。

「強引なお嬢様ですね」
楽しそうに笑うフレデリックは珍しく年相応に見えた。

「それはお互い様ですわ」

彼がふっと何かを企むよう表情に変わり、私の唇を人差し指でゆっくりとなぞる。

初めてオスカー以外の男とキスをした。
不意打ちだったけれど、彼を裏切ったような気持ちになり正直辛い。私は落ち込む気持ちを誤魔化すように不敵に笑う。
余裕のあるフリをしないとこの男とは対等に渡り合えない。

「フレデリック皇太子殿下は知識が豊富なんですね。少しお知恵を借りても良いですか?」
「もちろんです。ベッドでなら、何でもお聞きしますよ」

彼の言葉に私は少なからず落ち込んだ。アベラルド王国でも筆頭の公爵令嬢を差し置いて私がオスカーの婚約者になったのは体を使ったと今でも言われる。それだけ、周囲にとって私とオスカーの婚約は意外だった事もあるが、当時オスカーと婚約したのは十歳なのに卑猥に語り継がれるのが悲しい。

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