贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。

12.シェリル沼(オスカー視点)

王国歴732年11月26日

結婚披露宴の入場扉の前で真っ暗になった瞬間、オスカー・アベラルドは自分の全てを失いそうな恐怖に襲われた。シェリルは彼の全てだった。

♢♢♢

僕、オスカー・アベラルドは生まれた時から、次期国王になることが約束された国王夫婦の一人息子。父セレスタンは情婦はいたが側室は娶らなかった。側室は娶らず必ず自分の孫を跡取りにすることを条件に、何の後ろ盾もない第二王子に母エレーヌが嫁いだからだ。母の実家はありとあらゆる手段を用いて父に王位を継がせた。

僕の将来は生まれた時から明るかった。将来を約束された僕には沢山の縁談が舞い込んだ。貴族令嬢たちは皆、僕に媚を売ることに必死。そんな時に僕は二歳年下のシェリル・ヘッドリーと引き合わされた。

ヘッドリー侯爵家はアベラルド王国で最も裕福な領地を持つと言われていた。しかし、父も母も他の令嬢を僕の婚約者に推していた。

沢山の候補者がいる中、少し不思議な噂のあるシェリル・ヘッドリーに会いに行った。彼女は噂以上に変わっていて、愛したくなるような子だった。
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