義務だけの結婚だったのに社長の溺愛が熱すぎて息ができない

第2章 誘惑の準備と失敗

翌日、私は何事もなかったように朝食の準備をした。

テーブルに並べた皿の向こうで、碧斗はいつものように新聞を広げ、視線を落としたまま私の方を見ようともしない。

「ねえ、碧斗。」

「……なに?」

「今日、早く帰れそう?」

私の問いかけに、彼はようやく顔を上げ、新聞を畳んだ。

「……今日、何かの記念日だった?」

思わず苦笑がこぼれる。

「ううん。」

首を横に振った。私たちは出会って三か月で結婚した。

他の恋人たちのように、手を繋いだ日や初めてキスをした日を記念日として祝うことなんて、最初から存在しない。

形式だけの夫婦。

けれど私は、本当は記念日なんてなくてもいい。

ただ──もっと彼に、心ごと求められたかった。
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