義務だけの結婚だったのに社長の溺愛が熱すぎて息ができない
けれど碧斗は、私の様子に何かを察したのか、すっと立ち上がり、背後から腕を回して抱きしめてくれた。

「なるべく早く帰るようにするよ。」

「……碧斗。」

不器用な夫が口にしたその言葉に、胸がじんわりと温かくなる。

なんだか最近の碧斗は、以前よりも優しい言葉をかけてくれるようになった。

それがほんの少しだけ、嬉しかった。

「咲菜のお願いだからね。」

そう言って微笑む顔は、冷たい仮面を外した一瞬の光のようで、眩しく見えた。

「……無理しなくていいのよ。」

そう返すと、碧斗は「大丈夫」と言わんばかりに頬へ軽くキスを落とした。

その一瞬だけで、心がふわりと浮き立つ。

けれど同時に、どうしようもない渇きが胸の奥に残るのだった。
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