義務だけの結婚だったのに社長の溺愛が熱すぎて息ができない
玄関まで送りに行くと、碧斗はいつものように無駄のない動作で靴を履いた。

「じゃあ、行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

手を振ると、彼は一瞬だけ照れたように目を逸らし、すぐに玄関の扉を閉めた。

カチリと鍵のかかる音が、家の中を静寂で満たす。

「……さてと。」

ひとり呟きながら、碧斗が食べ終えた皿を下げ、流しに運ぶ。

水に浸した皿をスポンジでこすり、きゅっと音を立てて洗い上げた。

毎日のルーティン。家事は嫌いではない。

むしろ整った空間を見るのは心地よい。

けれど──碧斗がいない時間は、どうしても空しく感じてしまう。

結婚してまだ数か月。

理想の人を夫に迎えたはずなのに、満たされない心がぽっかりと穴を開けている。

ふと、その虚しさを誰かに聞いて欲しいと思った。
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