義務だけの結婚だったのに社長の溺愛が熱すぎて息ができない
試着室を出て、店員に黒のランジェリーを差し出した。

「こ、これ……ください」

自分の口から出た言葉に、心臓がどくんと跳ねる。

清楚で控えめな妻の私は、こんな下着を買うなんて絶対に似合わない。

けれど──。

「ありがとうございます。とてもお似合いでしたよ。」

店員の笑顔に、羞恥で顔が熱くなる。

袋に包まれていくランジェリーが、もう後戻りできない決意の証のようで、手が震えた。

お会計を済ませ、紙袋を抱えて店を出る。

駅へ向かう足取りは軽いのか重いのか、自分でも分からなかった。

──碧斗に見せたら、どうなるだろう。

いつもの淡白な営みじゃなく、もっと激しく、狂おしいほどに求めてくれるのだろうか。

白昼の街並みの中、紙袋の中の黒いレースが、胸の奥で甘くざわめいていた。
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