義務だけの結婚だったのに社長の溺愛が熱すぎて息ができない
そして、ふと気づいた。

「……そういえば、今日の下着……」

胸がどくんと跳ねる。

まさか、あの黒のスケスケランジェリーをつけたまま会社に行くなんて──。

でも、他に替えがない。

「……パッと見た目、分からないわよ。」

そう自分に言い聞かせて、私は玄関のドアノブに手をかけた。

外の空気は少し冷たくて、肌に触れるたび、下着の存在をいやでも意識させられる。

街のショーウィンドウを通り過ぎるたび、ガラスに映る自分の姿に一瞬ひやりとした。

(大丈夫。誰にも分からない……)

そう思いながら歩いても、心臓の鼓動は速くなるばかりだった。

スカートの裾の下、素肌をかすめるレースの感触が、やけに敏感に伝わる。

誰も知らないはずなのに──自分だけがその秘密を抱えていることが、どうしようもなくドキドキした。
< 33 / 55 >

この作品をシェア

pagetop