義務だけの結婚だったのに社長の溺愛が熱すぎて息ができない
会社のロビーに足を踏み入れた瞬間、空気がぴんと張りつめた。

磨き上げられた大理石の床に、自分のヒールの音が響く。受付の女性たちが一斉に頭を下げた。

「社長夫人、こんにちは。」

「こんにちは……」

微笑んで返しながらも、心の中ではドキドキが止まらなかった。

──まさか、こんな下着をつけたまま来ているなんて、誰も思わないだろう。

けれど、その秘密を胸の奥に抱えたまま、私は受付で碧斗の名前を告げた。

「御園社長にお弁当をお届けしたいんです。」

「承知しました。どうぞ、エレベーターで最上階へ。」

ガラス張りのエレベーターが静かに上昇していく。

下を見れば、街の夜景が宝石のように光っていた。

スカートの内側で、黒いレースが肌に擦れるたび、体温が上がっていく。

(大丈夫。誰にも見えてない。……でも、もし碧斗に気づかれたら──)

そう考えるだけで、胸の奥が熱くなる。

エレベーターの扉が「チン」と音を立てて開く。

廊下の突き当たり、重厚な扉の向こうが碧斗の社長室。

私は深呼吸をひとつして、ノックをした。

「碧斗、入ってもいい?」

 ──その瞬間、胸の鼓動はもう、止まりそうだった。
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