義務だけの結婚だったのに社長の溺愛が熱すぎて息ができない
「……咲菜?」

碧斗が顔を上げた。

驚いたような表情を浮かべたあと、ふっと笑みがこぼれる。

いつも冷静な彼が、ほんの少しだけ柔らかい顔を見せた。

「お弁当、作ってきたの。」

「弁当?」

「ありきたりなモノなんだけど……」

そう言って彼のデスクにお弁当を差し出す。

碧斗は嬉しそうに受け取り、蓋を開けた。

「おおっ、卵焼きが入ってる。」

思わず声が弾む。

その顔を見た瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなる。

たったそれだけのことなのに、こんなに嬉しいなんて。

「頂きます。」

碧斗は箸を取り、一口、卵焼きを口に運ぶ。

唇の動き、喉の動き──すべてが妙に艶めいて見えて、心臓が早鐘を打った。

(……嬉しい。でも、それだけじゃ足りないの)

 彼の微笑みが優しければ優しいほど、心の奥で渇きが疼いた。
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