義務だけの結婚だったのに社長の溺愛が熱すぎて息ができない
私はただ、碧斗の心が欲しかった。

身体ではなく、ちゃんと私を見てほしい――そんな思いが込み上げた。

「赤ちゃん、できたかもしれないの。」

一瞬、碧斗の動きが止まる。

「……本当に?」

驚きと戸惑いが混じった声。私は小さく頷いた。

「でも、まだ分からないの。病院には行ってないから。」

息を詰める私を、碧斗はそっと抱き寄せた。

「嬉しいよ。」

その言葉が静かに胸の奥に染みていく。

「今度、一緒に病院に行こう。」

優しく頭を撫でられて、涙が溢れそうになった。

「でも……碧斗、子どもは苦手だって言ってたじゃない。」

不安がこぼれると、碧斗は小さく笑った。

「他人の子はな。でも、自分の子どもは……きっと特別だ。」

その一言で、胸が熱くなった。

初めて、心から“家族”になれる気がした。

碧斗の腕の中、私は静かに目を閉じた。
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