義務だけの結婚だったのに社長の溺愛が熱すぎて息ができない
私はそっとベッドを抜け出した。

隣で眠る碧斗の寝息を背に、足音を忍ばせてキッチンへ向かう。

喉が、ひどく乾いていた。

蛇口をひねると、水が勢いよく流れ出す。

コップを差し出すと、すぐに透明な水が溢れ出し、シンクに滴り落ちた。

(まるで今の私みたい……)

碧斗への想いは、少しのきっかけで抑えが効かずに溢れてしまう。

けれど、それはただ流れ続けるだけで、彼に受け止めてもらえることはない。

水をゴクゴクと飲み干すと、胸の奥まで冷たさが広がり、しょんと気持ちが萎んだ。

(抱かれているのに……どうして、こんなに虚しいんだろう)

コップを置いたその時だった。

「……咲菜?」

背後から低い声が聞こえる。

振り向けば、碧斗が寝間着のまま立っていた。

まだ寝ぼけているような顔で、私を見ている。
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