見えない君は大切な人
「はるちゃん。思い出してほしいっていうのは、本当だけどね。思い出さなくていいんだよ。何を忘れていても、見えなくても。はるちゃんは、はるちゃんだからーーー」
「凪」
制すような声が私たちの間を通った。それは凛としていて聞き心地がよくて、安心するような声で。
「え……?」
その声は紛れもなく隣から聞こえたものだった。
隣の席を見る。
凪。確かにそう聞こえた。
でもそこには相変わらずの空席がある。
凪ちゃんの瞳はその空席をとらえていた。
「あんたは黙っててよ!私だって、思い出してほしいに決まってるじゃん!!」
それはきっと、凪ちゃんの切実な願いだったのだと思う。
「そんなの私だってわかってるよ!でも、教えてまた昔みたいになったら?今度は私まで見えなくなるかもしんな
いじゃん!!」
キッと空席をにらみつける。