【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
 ライザの職場である王立医療院は城に併設されているので、渡り廊下の向こうは王城の敷地だ。

 衛兵に身分証明書を見せて、ライザは城の廊下を更に進む。

 目的地である騎士団の詰所に到着すると、ちょうど休憩中の騎士らが談笑しているところだった。

「あ、ライザさん、こんにちは」

「こんにちは、皆様。薬の補充にまいりました」

「わ、助かる。一昨日、魔獣の討伐で結構使っちゃったんだよ」

 笑顔で近づいてきた騎士が、台車の上に載せた箱をひょいっと持ち上げた。種類別にいくつもの箱を積んでいて重たかったので、ひとつ減るだけでも随分軽くなる。

 礼を言おうとしたら、別の騎士がずいっと前に出てきた。

「おまえばっかりずるいぞ! 俺も手伝うよ」

「そうだそうだ、抜け駆けすんなよ」

「運ぶのはあいつらに任せて、ライザさんはこっちでお茶でも飲んでいきなよ。ほら、座って」

 あっという間に騎士に取り囲まれて、ライザは曖昧な笑みを浮かべて首を横に振る。

「仕事中ですから……」

「ちょっとくらい大丈夫だって」

「いえ、急ぐので」

 なんとか穏便に済まそうと笑顔を浮かべたまま、ライザは握られた手を離してもらおうと努力する。

 騎士団は圧倒的に男性が多いためか、彼らは女性が来ると浮ついた空気になる。ちやほやされることを楽しんでいる同僚もいるけれど、ライザは大勢の男性に囲まれるのが苦手だ。

 生真面目で堅苦しく、話しかけにくい雰囲気を押し出すようには意識しているのだが、それでもこうして囲まれてしまうことが時々ある。ちょうど休憩時間で、彼らの気持ちも緩んでいたせいかもしれない。

 その時、背後から地の底から響くような低い声が聞こえた。

「おまえら、休憩時間はとっくに終わってるぞ! 癒し手殿の仕事の邪魔をするとは何事か!」

 そこに立っていたのは、騎士服を身に纏った背の高い男。金の髪に青い瞳を持つその顔は整っていて、まるで恋愛物語に出てくる王子様のよう。面食いな聖女ヴェーラが気に入るのも当然と思えるほどの美貌の持ち主だ。ただしその顔は険しく、怒っているように見える。

 彼はこの騎士団の長を務める、イグナート・リガロフ。伯爵家の嫡男で、王子様ではない。
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