【4/24書籍発売】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
 馬車を乗り継いで、陽が沈む頃にようやく王都にたどり着いた。初めての長距離移動で、双子たちは疲れたのかぐっすりと眠っている。

 宿の部屋に子供たちを寝かせて、ライザは夕食を買いに行くことにした。タマラが双子の様子を見ていてくれると言うので、甘えることにする。

「明日の朝食も買ってきますね。他になにか必要な物はありますか?」

「そうねぇ、せっかくだから甘いものをお願いしようかしら。田舎町では売っていなさそうなものがいいわね」

「ふふ、分かりました。美味しそうなものを探してきますね!」

 タマラに手を振って、ライザは宿の外に出た。双子がいつ目覚めるか分からないので、あまり長時間の買い物はできない。

 久しぶりの王都に少しだけ懐かしい気持ちになりながら、ライザは帽子を目深にかぶると歩き出した。

 市場で夕食と明日の朝に食べるパンを購入して、タマラと約束したお菓子も購入した。カラフルな見た目が可愛らしいマカロンは、ホルムの町では見かけないので、彼女もきっと喜ぶだろう。

 早く宿に戻らねばと歩いていると、すれ違った男性の口から聖女の名前が聞こえて思わず足を止めてしまう。

「……ヴェーラ様の婚礼衣装の仕立てに、職人が何人か引き抜かれてるんだ」

「光栄なこととはいえ、人手不足は深刻だなぁ」

「まぁ、聖女様のご結婚はめでたいことだから、仕方ないんだけどさ。求人広告を出そうかと、考えてるんだ」

 そんなことを話しながら、男たちは去っていく。聖女ヴェーラの結婚相手は、やはりイグナートなのだろうか。

 ぐっと胸が苦しくなるのを感じて、ライザは襟元をきつく握りしめた。震える呼吸を繰り返しながら、なんとか落ち着こうと努力する。

 イグナートに会うことはなくても、王都に来れば彼の名前に触れる機会は増える。

 タマラや子供たちに、悟られるわけにはいかないのだ。ライザは冷静になれと、自分に言い聞かせた。
< 28 / 82 >

この作品をシェア

pagetop