【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
「お帰りなさいませ、イグナート様。そしてようこそお越しくださいました、ライザ様。アーラ様とパーヴェル様も、ようこそ」
出迎えてくれた執事のうしろには、いつの間にやら使用人たちがずらりと整列している。執事の言葉を合図に、皆が頭を下げていく。大勢の人に驚いたのかアーラが一瞬足を止めたが、すかさずイグナートが抱き上げたことで安心したようだ。
「ママ、おててぎゅー、して」
どうやらパーヴェルも少し不安なようで、手を繋ぎたがる。ライザは小さな手をしっかりと握りしめると、イグナートのあとについて歩き出した。
大きな玄関の扉を開けると、そこには初老の男女の姿があった。リガロフ伯爵夫妻に違いない。かつて騎士団で副長を務めていたというリガロフ伯爵は、今もなお鍛え上げられた身体つきをしている。隣の上品な美女は伯爵夫人で、イグナートは母親似であることがよく分かる。彼女は王弟殿下の娘なので、リガロフ家は王家との繋がりも深い。同じ伯爵家といっても、ライザの生家とは大違いなのだ。
ライザは姿勢を正すと、深く腰を折った。
「っあの、はじめまして。ライザ・アントノーヴァと申します。この度は……私たちを受け入れてくださり、感謝しています」
「ようこそ、ライザさん。うちの愚息のせいで、今まで大変な苦労をかけた。こちらこそ、親としてどうお詫びすればいいか……。せめてこれからは、家族としてできることはなんでもするつもりだから、遠慮なく頼ってほしい」
「そうよ、剣術や鍛錬にしか興味がなくて、聖女様にすら顔だけって言われたようなイグナートが、こんなにも可愛らしいお嫁さんを連れてきてくれるなんて、嬉しくてたまらないのよ。可愛い孫までいるなんて、幸せすぎて倒れそう。でも、イグナートが浄化の旅に出る前に結婚を申し込んでおけば、ライザさんにこんなにも苦労をかけることはなかったのに……。本当に情けないわ」
伯爵夫妻の言葉に、イグナートは居心地悪そうな顔をする。二人が歓迎してくれていることは分かったので、ライザも少しホッとして肩の力を抜いた。
「ママ、おばーちゃまとおじーちゃま?」
アーラの言葉に、リガロフ伯爵夫人がぱぁっと顔を輝かせた。
「そう、そうよ! おばあちゃまって呼んでちょうだい……!」
目じりを下げた伯爵夫人が、身をかがめてアーラとパーヴェルの顔をのぞき込む。双子は顔を見合わせると、にこっと笑みを浮かべた。
「アーラです。よろしくおねがい、します!」
「パーヴェルです。おねがい、ます!」
昨晩こっそり親子で練習した通りの挨拶に、伯爵夫妻は撃ち抜かれたように両手で胸を押さえた。
「可愛い……! 挨拶が上手ねぇ。うちの孫、天才かしら」
「イグナートが小さい頃より賢いな」
「さぁ、奥のお部屋にお菓子やおもちゃをたくさん用意してあるの。おばあちゃまと一緒にお茶をして、それからたくさん遊びましょう」
「あそぶー!」
「おかし!」
双子たちは、あっという間に祖父母に懐いたようだ。それぞれ抱っこしてもらって、奥の部屋へと案内されていく。子供の順応力に驚かされつつ、イグナートの両親が双子を悪いようにしないことは分かっているので、そのまま任せることにした。
「俺たちも、部屋で休もうか」
そう言って、イグナートがさりげなくライザの腰に手を回す。単なるエスコートに過ぎないものの、久しぶりに人前で密着することに妙に気恥ずかしい気持ちになりながら、ライザはうなずいた。
出迎えてくれた執事のうしろには、いつの間にやら使用人たちがずらりと整列している。執事の言葉を合図に、皆が頭を下げていく。大勢の人に驚いたのかアーラが一瞬足を止めたが、すかさずイグナートが抱き上げたことで安心したようだ。
「ママ、おててぎゅー、して」
どうやらパーヴェルも少し不安なようで、手を繋ぎたがる。ライザは小さな手をしっかりと握りしめると、イグナートのあとについて歩き出した。
大きな玄関の扉を開けると、そこには初老の男女の姿があった。リガロフ伯爵夫妻に違いない。かつて騎士団で副長を務めていたというリガロフ伯爵は、今もなお鍛え上げられた身体つきをしている。隣の上品な美女は伯爵夫人で、イグナートは母親似であることがよく分かる。彼女は王弟殿下の娘なので、リガロフ家は王家との繋がりも深い。同じ伯爵家といっても、ライザの生家とは大違いなのだ。
ライザは姿勢を正すと、深く腰を折った。
「っあの、はじめまして。ライザ・アントノーヴァと申します。この度は……私たちを受け入れてくださり、感謝しています」
「ようこそ、ライザさん。うちの愚息のせいで、今まで大変な苦労をかけた。こちらこそ、親としてどうお詫びすればいいか……。せめてこれからは、家族としてできることはなんでもするつもりだから、遠慮なく頼ってほしい」
「そうよ、剣術や鍛錬にしか興味がなくて、聖女様にすら顔だけって言われたようなイグナートが、こんなにも可愛らしいお嫁さんを連れてきてくれるなんて、嬉しくてたまらないのよ。可愛い孫までいるなんて、幸せすぎて倒れそう。でも、イグナートが浄化の旅に出る前に結婚を申し込んでおけば、ライザさんにこんなにも苦労をかけることはなかったのに……。本当に情けないわ」
伯爵夫妻の言葉に、イグナートは居心地悪そうな顔をする。二人が歓迎してくれていることは分かったので、ライザも少しホッとして肩の力を抜いた。
「ママ、おばーちゃまとおじーちゃま?」
アーラの言葉に、リガロフ伯爵夫人がぱぁっと顔を輝かせた。
「そう、そうよ! おばあちゃまって呼んでちょうだい……!」
目じりを下げた伯爵夫人が、身をかがめてアーラとパーヴェルの顔をのぞき込む。双子は顔を見合わせると、にこっと笑みを浮かべた。
「アーラです。よろしくおねがい、します!」
「パーヴェルです。おねがい、ます!」
昨晩こっそり親子で練習した通りの挨拶に、伯爵夫妻は撃ち抜かれたように両手で胸を押さえた。
「可愛い……! 挨拶が上手ねぇ。うちの孫、天才かしら」
「イグナートが小さい頃より賢いな」
「さぁ、奥のお部屋にお菓子やおもちゃをたくさん用意してあるの。おばあちゃまと一緒にお茶をして、それからたくさん遊びましょう」
「あそぶー!」
「おかし!」
双子たちは、あっという間に祖父母に懐いたようだ。それぞれ抱っこしてもらって、奥の部屋へと案内されていく。子供の順応力に驚かされつつ、イグナートの両親が双子を悪いようにしないことは分かっているので、そのまま任せることにした。
「俺たちも、部屋で休もうか」
そう言って、イグナートがさりげなくライザの腰に手を回す。単なるエスコートに過ぎないものの、久しぶりに人前で密着することに妙に気恥ずかしい気持ちになりながら、ライザはうなずいた。