【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
「では、行ってくる」
「えぇ、気をつけて。行ってらっしゃい」
仕事に向かうイグナートを、親子で見送るのは毎日の習慣となった。イグナートは名残惜しそうに双子を抱き上げ、それぞれの頬に何度もキスをする。そして最後にライザを抱き寄せると、額にキスをくれるのだ。
それを見た子供たちが「ママも、ちゅーして!」と言うので、ライザもイグナートの頬か額に口づける。
夫婦の甘い見送りというわけではないが、毎朝のこの習慣がライザはとても好きだ。
イグナートを見送ると、子供たちはそれぞれ好きなことをして遊び始めた。今日は昼からアナスタシアが訪ねてくることになっているので、それまでは子供とゆっくり過ごすつもりだ。
連絡先を交換したものの、その日のうちにイグナートに見つかってしまったため、彼女とはほとんど手紙のやりとりをしていない。王都に戻ってきた報告と、お茶会の場所をリガロフ伯爵家に指定した招待状を出したので、きっとアナスタシアはライザの現状がどうなっているのかと興味津々に違いない。
約束通り昼過ぎにやってきたアナスタシアは、出迎えたライザを見て安心したように笑った。
「突然の手紙に、本当に驚いたのよ。でも表情を見る限り、困っているわけではなさそうね」
「ごめんなさい、驚かせて。色々と説明したいことはあるんだけど、前よりずっと、今の方が幸せだわ」
「それならよかった。ゆっくりと、聞かせてちょうだい」
ライザはうなずいて、アナスタシアを部屋へと案内した。お茶の準備を整えると、侍女は退室していく。気兼ねなく話せるようにと、子供たちは伯爵夫人が見てくれている。
お茶に口をつける前に、アナスタシアはまっすぐにライザを見つめた。
「イグナート様と結婚するのね?」
「……そう、ね。まだ届けは出していないんだけど」
「実は、前からそうじゃないかなと思っていたのよ。イグナート様の情熱的な求婚に、ライザがついに折れた……ということかしら」
くすくすと楽しそうに笑うアナスタシアに、ライザは首をかしげた。二人の関係は誰にも知らせていなかったのに、彼女は何故それを知っているのだろう。
ライザの表情を見て、アナスタシアはずいっと身を乗り出した。
「だってね、イグナート様が浄化の旅を終えて戻ってきてすぐに、ライザを訪ねてきたんだもの」
「え?」
「ライザは三年前に仕事を辞めているってお伝えしたら、今にも倒れそうなくらい真っ青な顔になってしまったのよ。どうやら家を訪ねたのにライザが引っ越して不在だったことに驚いて、行方を探して医療院に来られたみたい。家を知っているということは、それなりに深い関係にあったのかなって思っていたの」
アナスタシアの説明に、ライザは驚きつつも納得してうなずく。その際に対応したのはアナスタシアだけなので、ライザとイグナートがなんらかの関係にあることを知っているのは、彼女だけだという。
「そうだったのね……。実は、仕事をしていた頃からおつきあいをしていたの。私は実家が色々とややこしいから、公にはしていなかったんだけど」
あの頃の二人の関係は恋人と呼べるものではなかったが、さすがにセフレとしてのつきあいだったと言うわけにはいかない。少なくともイグナートは恋人のつもりだったのだから、嘘ではないのだ。
「秘密の関係だなんて、なんだかロマンティックね。それで、イグナート様が浄化の旅に出ることになって、一度はお別れしたということ?」
「そうね。私はそのつもりだったんだけど……実はそのあとに、妊娠が判明して」
「えぇっ!?」
驚いてのけぞるアナスタシアに、ライザは黙って立ち上がると窓辺へと向かった。庭で双子が楽しそうに遊ぶ姿が、窓から見える。
「えぇ、気をつけて。行ってらっしゃい」
仕事に向かうイグナートを、親子で見送るのは毎日の習慣となった。イグナートは名残惜しそうに双子を抱き上げ、それぞれの頬に何度もキスをする。そして最後にライザを抱き寄せると、額にキスをくれるのだ。
それを見た子供たちが「ママも、ちゅーして!」と言うので、ライザもイグナートの頬か額に口づける。
夫婦の甘い見送りというわけではないが、毎朝のこの習慣がライザはとても好きだ。
イグナートを見送ると、子供たちはそれぞれ好きなことをして遊び始めた。今日は昼からアナスタシアが訪ねてくることになっているので、それまでは子供とゆっくり過ごすつもりだ。
連絡先を交換したものの、その日のうちにイグナートに見つかってしまったため、彼女とはほとんど手紙のやりとりをしていない。王都に戻ってきた報告と、お茶会の場所をリガロフ伯爵家に指定した招待状を出したので、きっとアナスタシアはライザの現状がどうなっているのかと興味津々に違いない。
約束通り昼過ぎにやってきたアナスタシアは、出迎えたライザを見て安心したように笑った。
「突然の手紙に、本当に驚いたのよ。でも表情を見る限り、困っているわけではなさそうね」
「ごめんなさい、驚かせて。色々と説明したいことはあるんだけど、前よりずっと、今の方が幸せだわ」
「それならよかった。ゆっくりと、聞かせてちょうだい」
ライザはうなずいて、アナスタシアを部屋へと案内した。お茶の準備を整えると、侍女は退室していく。気兼ねなく話せるようにと、子供たちは伯爵夫人が見てくれている。
お茶に口をつける前に、アナスタシアはまっすぐにライザを見つめた。
「イグナート様と結婚するのね?」
「……そう、ね。まだ届けは出していないんだけど」
「実は、前からそうじゃないかなと思っていたのよ。イグナート様の情熱的な求婚に、ライザがついに折れた……ということかしら」
くすくすと楽しそうに笑うアナスタシアに、ライザは首をかしげた。二人の関係は誰にも知らせていなかったのに、彼女は何故それを知っているのだろう。
ライザの表情を見て、アナスタシアはずいっと身を乗り出した。
「だってね、イグナート様が浄化の旅を終えて戻ってきてすぐに、ライザを訪ねてきたんだもの」
「え?」
「ライザは三年前に仕事を辞めているってお伝えしたら、今にも倒れそうなくらい真っ青な顔になってしまったのよ。どうやら家を訪ねたのにライザが引っ越して不在だったことに驚いて、行方を探して医療院に来られたみたい。家を知っているということは、それなりに深い関係にあったのかなって思っていたの」
アナスタシアの説明に、ライザは驚きつつも納得してうなずく。その際に対応したのはアナスタシアだけなので、ライザとイグナートがなんらかの関係にあることを知っているのは、彼女だけだという。
「そうだったのね……。実は、仕事をしていた頃からおつきあいをしていたの。私は実家が色々とややこしいから、公にはしていなかったんだけど」
あの頃の二人の関係は恋人と呼べるものではなかったが、さすがにセフレとしてのつきあいだったと言うわけにはいかない。少なくともイグナートは恋人のつもりだったのだから、嘘ではないのだ。
「秘密の関係だなんて、なんだかロマンティックね。それで、イグナート様が浄化の旅に出ることになって、一度はお別れしたということ?」
「そうね。私はそのつもりだったんだけど……実はそのあとに、妊娠が判明して」
「えぇっ!?」
驚いてのけぞるアナスタシアに、ライザは黙って立ち上がると窓辺へと向かった。庭で双子が楽しそうに遊ぶ姿が、窓から見える。