【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
「――ライザ?」
無意識に、彼女の名前が口からこぼれ落ちる。
イグナートの声に反応して、ライザの肩がぴくりと跳ねる。背を向けたまま動かない彼女に、イグナートは震える足を踏み出した。
ゆっくりと顔をのぞき込むと、ライザはまるで目を合わせたくないというように視線を逸らした。そのことに微かな違和感を抱きつつも、やっと会えた嬉しさで涙が出そうになる。
「ライザ」
もう一度名前を呼ぶと、彼女は更に視線を逸らした。
「どなたかと勘違いされているのでは」
硬い声もその言葉も、イグナートを拒絶しているように思える。だが、ついに見つけた最愛の人をここで手放すわけにはいかない。
彼女がライザ・アントノーヴァである証拠を突きつけ、逃げられないよう腕を掴むと、ライザはおずおずと顔を上げた。
ようやく正面から見ることのできたライザの顔を見つめ、イグナートは今すぐにでも抱きしめたい気持ちと戦っていた。
離れ離れになっていたこの数年の間に、ライザに何かがあったことは確かだ。
体調を崩して仕事を辞めたと聞いていたが、見たところ顔色は悪くなさそうで安心する。ゆっくり話す時間が欲しいと願い出たが、ライザは冷たい声で必要ないと首を横に振った。
まさか心変わりしてしまったのかと、足元から崩れ落ちそうな気持ちになっていると、ふと背後に人の気配を感じた。
「ママ!」
そう呼びかける高い声に、ライザがハッと振り返る。
そこにいたのは、初老の女性に連れられた幼児が二人。そっくりな顔立ちをしているので、双子のようだ。
自分と同じ淡い金の髪を持つ二人の顔を見て、イグナートは小さく息をのんだ。幼い二人の顔は、イグナートの幼い頃によく似ている。
男の子の方はライザと同じ意志の強そうな緑の瞳を持ち、優しげな顔立ちの女の子の方は、イグナートと同じ青い瞳をしていた。
どう見てもこの子たちは、ライザとイグナートの子に違いない。なのに、ライザはそれを否定した。
動揺のあまり頭が真っ白になって、イグナートは去っていくライザと子供たちを引き止めることすらできなかった。だが再び会えた最愛の人を、そして二人の子供を、失うわけにはいかない。
イグナートは必死に行方を追い、居場所を突き止めた。少々違法な手段を使ったが、なりふり構っていられなかった。
ライザの口から「自分たちの関係はセフレだった」と言われたり、イグナートとヴェーラの関係を疑っていたりと、信じがたいことばかり言われて愕然としたが、その誤解を解くことにも成功した。
再び伝えた想いを受け止めてくれたライザを、もう二度と手放さないと決めたし、ライザと子供たちを絶対に幸せにすると誓った。
「……早くライザと子供たちに会いたい」
ため息をついて、イグナートは再びペンを手に取る。この仕事を終わらせなければ、家には帰れないのだ。
愛おしい人の待つ家に一刻も早く帰ろうと、イグナートは苦いコーヒーを口に含んでから書類に手を伸ばした。
無意識に、彼女の名前が口からこぼれ落ちる。
イグナートの声に反応して、ライザの肩がぴくりと跳ねる。背を向けたまま動かない彼女に、イグナートは震える足を踏み出した。
ゆっくりと顔をのぞき込むと、ライザはまるで目を合わせたくないというように視線を逸らした。そのことに微かな違和感を抱きつつも、やっと会えた嬉しさで涙が出そうになる。
「ライザ」
もう一度名前を呼ぶと、彼女は更に視線を逸らした。
「どなたかと勘違いされているのでは」
硬い声もその言葉も、イグナートを拒絶しているように思える。だが、ついに見つけた最愛の人をここで手放すわけにはいかない。
彼女がライザ・アントノーヴァである証拠を突きつけ、逃げられないよう腕を掴むと、ライザはおずおずと顔を上げた。
ようやく正面から見ることのできたライザの顔を見つめ、イグナートは今すぐにでも抱きしめたい気持ちと戦っていた。
離れ離れになっていたこの数年の間に、ライザに何かがあったことは確かだ。
体調を崩して仕事を辞めたと聞いていたが、見たところ顔色は悪くなさそうで安心する。ゆっくり話す時間が欲しいと願い出たが、ライザは冷たい声で必要ないと首を横に振った。
まさか心変わりしてしまったのかと、足元から崩れ落ちそうな気持ちになっていると、ふと背後に人の気配を感じた。
「ママ!」
そう呼びかける高い声に、ライザがハッと振り返る。
そこにいたのは、初老の女性に連れられた幼児が二人。そっくりな顔立ちをしているので、双子のようだ。
自分と同じ淡い金の髪を持つ二人の顔を見て、イグナートは小さく息をのんだ。幼い二人の顔は、イグナートの幼い頃によく似ている。
男の子の方はライザと同じ意志の強そうな緑の瞳を持ち、優しげな顔立ちの女の子の方は、イグナートと同じ青い瞳をしていた。
どう見てもこの子たちは、ライザとイグナートの子に違いない。なのに、ライザはそれを否定した。
動揺のあまり頭が真っ白になって、イグナートは去っていくライザと子供たちを引き止めることすらできなかった。だが再び会えた最愛の人を、そして二人の子供を、失うわけにはいかない。
イグナートは必死に行方を追い、居場所を突き止めた。少々違法な手段を使ったが、なりふり構っていられなかった。
ライザの口から「自分たちの関係はセフレだった」と言われたり、イグナートとヴェーラの関係を疑っていたりと、信じがたいことばかり言われて愕然としたが、その誤解を解くことにも成功した。
再び伝えた想いを受け止めてくれたライザを、もう二度と手放さないと決めたし、ライザと子供たちを絶対に幸せにすると誓った。
「……早くライザと子供たちに会いたい」
ため息をついて、イグナートは再びペンを手に取る。この仕事を終わらせなければ、家には帰れないのだ。
愛おしい人の待つ家に一刻も早く帰ろうと、イグナートは苦いコーヒーを口に含んでから書類に手を伸ばした。