【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
 予定されていた五年より大幅に期間を短縮して旅を終えたイグナートは、王都に帰還すると一番にライザの家に向かった。

 だが、訪ねた家に住んでいたのは別人で、聞けば三年前からここに住んでいるという。

 どういうことだと焦りながらライザの職場である医療院に向かい、顔見知りの癒し手に声をかけた。ふわふわとした髪が印象的な彼女は、ライザとも親しくしていたはずだ。

「え? ライザですか? 随分前に退職しましたけど」

「え……退職って、どうして。いつから……」

「ちょうど、イグナート様が浄化の旅に出られたあとでしたよ。体調を崩して、空気のいいところで療養したいって言ってました」

「て、転居先は知ってるか?」

 必死に食い下がると、彼女はうーんと唸って首をかしげた。

「申し訳ありません、分からないですね。ご実家に戻ったわけではないと思いますけど……」

 その言葉に、イグナートも内心でうなずく。ライザと実家との関係を思えば、家に戻ったとは考えにくい。それでも念のためアントノーヴァ伯爵家にそれとなく探りを入れようと決めて、イグナートは癒し手の女性に礼を言って別れた。

 結局、調べてもライザの居場所は掴めなかった。実家に戻った様子もないし、連絡先を知っている者もいない。騎士団長の地位を利用して医療院の職員名簿もこっそり確認したが、ライザの行方は分からなかった。

 手がかりがあるとすれば、ライザの癒しの力。実家の力を使わず生活をしていくためには、働く必要がある。彼女はきっと、どこかで癒し手として働いているはずだ。

 王立医療院の名誉院長はイグナートの遠い親戚で、国中にある医療院を統括する立場でもある。その伝手でどんな小さな医療院もリストにまとめ、イグナートは空いている時間の全てを使って王都中の医療院を探して回った。王都で見つからなければ、範囲を広げて他の町も探すつもりだった。

 そんな時、窃盗犯を捕えるために王都中を駆け回った帰り、見覚えのあるうしろ姿を見つけたのだ。

 絶対に見間違えるはずのない、その背中。ずっと探していた、愛しい人。
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