【4/24書籍発売】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています


 グラシムが言った通り、アントノーヴァ家はその後あっという間に没落した。夫婦のどちらもが愛人に金を使っていて、資産はとうに底をついていたらしい。

 没落の気配を感じ取った愛人らはあっという間に離れていき、残されたのはコヴァレー男爵への借金だけ。どうやらライザを妻として迎えたら癒し手の力をただで使い放題だと唆して、膨大な結婚支度金を引き出していたらしい。

 結婚の話が立ち消えとなったため、コヴァレー男爵からもらっていた支度金を返済するには屋敷を売り、夫人のコレクションしていたドレスや宝飾品を売り払うしかなかった。それでも、完済には程遠い。

 商人であるコヴァレー男爵は借金の踏み倒しを決して許さず、住むところをなくしたアントノーヴァ伯爵夫妻に住居を提供する代わりに、自身の店で働かせることにした。

 給与の大半を借金返済の名目で奪われ、かつての屋敷の一部屋よりも小さな家で生活しながら、朝から晩まで働かされているという。

 グラシムは通っていた貴族学校を中退して以降行方が分からなくなっていたのだが、ある日ライザのもとに手紙が届いた。差出人はグラシムで、彼は今、国外にいるらしい。

 実家の没落を知った学校の美術講師が、ちょうど仕事を辞めるタイミングで声をかけてくれたようだ。絵を描くことが好きだったグラシムは、彼に弟子入りして旅を続けながら絵を学ぶつもりなのだという。

 最初で最後の手紙だと書いてあったが、そこにはライザとイグナートへの謝罪と幸せを願う文言が並んでいた。
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