【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
「……都合のいい時だけ、家族だなんて言わないで。私はもう、アントノーヴァ家とは……なんの関係もない。私の家族は、あなたたちじゃないわ」
「この、薄情者……っ」
再び義母が叫んで立ち上がった瞬間、隣に座っていたグラシムがスッと手を出してそれを止めた。そして、生気のない目で両親を見つめ、微かなため息をつく。
「いい加減、父さんも母さんも諦めなよ。今まで義姉さんのことを散々蔑ろにしておいて、助けてもらえるはずがないだろ」
「な……なんてこと言うの、グラシム。わたしはあなたのためを思って……!」
母親の言葉に、グラシムは呆れたような笑みを浮かべた。
「僕のため? 母さんは、新しいドレスを買う金が欲しいだけだろ。――若いデザイナーの男に入れあげてるみたいだもんね」
「どういうことだ、オリガ。金がないからドレスは買うなと言ったはずだ。それにデザイナーの男ってなんだ」
「な、なんのことかしら。ドレスだってほんの数着しか買ってないわよ」
慌てたように言い訳をする義母は、額に滲んだ汗をしきりにハンカチで拭っている。
グラシムは醒めた目で、今度は父親を見た。
「父さんだって、僕の家庭教師って名目でお気に入りの娼婦を呼び寄せて、随分と楽しそうにしてるじゃないか」
「な……っ、家に娼婦を連れ込んでいるって、どういうこと……!?」
「ご、誤解だ」
「信じられない、汚らわしいわ!」
ぎゃあぎゃあと言い争いを始める二人を見て、グラシムは鼻で笑う。
「うちの資産は底をついてる。今更義姉さんが戻ってきたところで、何も変わらない。アントノーヴァ家はもう長くないんだよ」
息子の冷たい言葉に、両親はハッとしたように口をつぐむ。グラシムは立ち上がると、ライザたちに向けて頭を下げた。
「お騒がせしまして、申し訳ありません。アントノーヴァ家は、今後一切こちらに関わらないとお約束します。ですから――メーレフ公爵令嬢への本日の非礼については、見逃してもらえると幸いです」
人目もはばからず夫婦喧嘩を始めた伯爵夫妻よりも、未成年のグラシムのほうが、よっぽどしっかりしている。
今更ながら、ライザがメーレフ公爵令嬢という立場であることを思い出したのか、二人は青い顔になった。たとえ血の繋がりがあっても、今はライザのほうが家格が上だ。この国で大きな力を持つメーレフ公爵家に、いち伯爵家であるアントノーヴァ家が敵うはずがない。
グラシムに促されて、アントノーヴァ伯爵夫妻は挨拶もそこそこに逃げるように部屋を出て行った。
最後にグラシムは足を止めると振り返り、ライザを見た。
「……こう呼ぶのは、もう最後だけど。義姉さん、どうぞお幸せに」
それだけ言って、グラシムも部屋を出て行った。
「この、薄情者……っ」
再び義母が叫んで立ち上がった瞬間、隣に座っていたグラシムがスッと手を出してそれを止めた。そして、生気のない目で両親を見つめ、微かなため息をつく。
「いい加減、父さんも母さんも諦めなよ。今まで義姉さんのことを散々蔑ろにしておいて、助けてもらえるはずがないだろ」
「な……なんてこと言うの、グラシム。わたしはあなたのためを思って……!」
母親の言葉に、グラシムは呆れたような笑みを浮かべた。
「僕のため? 母さんは、新しいドレスを買う金が欲しいだけだろ。――若いデザイナーの男に入れあげてるみたいだもんね」
「どういうことだ、オリガ。金がないからドレスは買うなと言ったはずだ。それにデザイナーの男ってなんだ」
「な、なんのことかしら。ドレスだってほんの数着しか買ってないわよ」
慌てたように言い訳をする義母は、額に滲んだ汗をしきりにハンカチで拭っている。
グラシムは醒めた目で、今度は父親を見た。
「父さんだって、僕の家庭教師って名目でお気に入りの娼婦を呼び寄せて、随分と楽しそうにしてるじゃないか」
「な……っ、家に娼婦を連れ込んでいるって、どういうこと……!?」
「ご、誤解だ」
「信じられない、汚らわしいわ!」
ぎゃあぎゃあと言い争いを始める二人を見て、グラシムは鼻で笑う。
「うちの資産は底をついてる。今更義姉さんが戻ってきたところで、何も変わらない。アントノーヴァ家はもう長くないんだよ」
息子の冷たい言葉に、両親はハッとしたように口をつぐむ。グラシムは立ち上がると、ライザたちに向けて頭を下げた。
「お騒がせしまして、申し訳ありません。アントノーヴァ家は、今後一切こちらに関わらないとお約束します。ですから――メーレフ公爵令嬢への本日の非礼については、見逃してもらえると幸いです」
人目もはばからず夫婦喧嘩を始めた伯爵夫妻よりも、未成年のグラシムのほうが、よっぽどしっかりしている。
今更ながら、ライザがメーレフ公爵令嬢という立場であることを思い出したのか、二人は青い顔になった。たとえ血の繋がりがあっても、今はライザのほうが家格が上だ。この国で大きな力を持つメーレフ公爵家に、いち伯爵家であるアントノーヴァ家が敵うはずがない。
グラシムに促されて、アントノーヴァ伯爵夫妻は挨拶もそこそこに逃げるように部屋を出て行った。
最後にグラシムは足を止めると振り返り、ライザを見た。
「……こう呼ぶのは、もう最後だけど。義姉さん、どうぞお幸せに」
それだけ言って、グラシムも部屋を出て行った。