【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
 陽が落ちる頃、パーティーはお開きとなった。

 一度お昼寝をしてすっかり元気を取り戻した双子たちは、皆が帰ってしまうのが悲しいと大泣きして大人たちを大層慌てさせた。

「それなら今夜は、おじいちゃまとおばあちゃまと一緒に、お泊りに行きましょうか」

「おとまり?」

 まだ赤い目をしてしゃくり上げながら、アーラが首をかしげる。大きな瞳からこぼれ落ちそうになっていた涙を拭って、リガロフ伯爵夫人はにっこりと笑った。

「そう。大きな湖の近くに、おうちがあるの。今夜はそこにお泊りして、明日はボートに乗って遊びましょう」

 まるで今思いついたかのような提案だが、もともと決まっていたことだ。初夜を邪魔しては悪いという気遣いのもと、子供たちは伯爵夫妻と共に別荘で過ごす予定なのだ。

 湖を望む美しい景色が楽しめる別荘は、イグナートも子供の頃から毎年訪れていた場所らしい。次は家族四人で行こうと、イグナートとは密かに約束をしている。 

「おふね? おさかないるかな」

 さっきまで泣きじゃくっていたはずのパーヴェルも、きらきらと目を輝かせている。それを見て、伯爵が笑顔でうなずいた。

「たくさんお魚もいるぞ。釣った魚を食べることもできるんだ。パーヴェルもアーラも、お魚は好きだろう?」

「すき!」

「おさかな、すきー! パーヴェル、なんでもたべてえらいこだもん」

「アーラも、えらいこよ!」

「じゃあ、決まりね。お父さんとお母さんはお留守番だけど、二人とも大丈夫?」

 伯爵夫人の言葉に、アーラとパーヴェルは揃ってライザとイグナートを見た。

「ママ、おるすばんできる? いいこ、できる?」

「おとーしゃんは、おるすばんよ。いいこしててね」

 いつもライザが二人に言って聞かせる時と同じような口調で双子が言うから、イグナートは笑いを噛み殺しながらうなずいた。

「大丈夫だ、ちゃんといい子にしてる。なぁ、ライザ」

「えぇ、そうね。ちゃんとお留守番してるから、アーラとパーヴェルは楽しんできて」

「いいこしてるのよ!」

「おみやげ、かってくるからね!」

 親と離れてのお泊まりは不安だから嫌だと泣かれるかと心配していたが、問題なさそうだ。

 双子たちは祖父母と手を繋ぎ、大はしゃぎでお泊りに行ってしまった。

 手を振って見送ったあと、ライザは思わず苦笑した。

「……こうもあっさりしていると、それはそれでちょっと複雑な気分だわ」

「でも、行きたくないって大泣きされたら、困っただろう」

「それもそうね」

 うなずいたライザの肩を、イグナートがそっと抱き寄せた。

「ということで、ここからは夫婦の時間だ」

「あらためて言われると、なんか……すごく、照れるんだけど」

「そんなライザも新鮮でいいな」

 くすくすと笑いながら、イグナートはライザをひょいっと抱き上げた。誰かに見られたら恥ずかしいと慌ててしまうが、今夜は屋敷内にいる使用人も最低限だ。誰も邪魔の入らない二人きりの夜を、ゆっくり楽しんでと皆に言われているようで気恥ずかしい。

「三年と半年分、たっぷり愛するから覚悟してて」

 頬に口づけを落とし、イグナートは上機嫌で歩き出した。

 
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