私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ








『それでは互いに近いの言葉を』


『愛している』


神父役の言葉の後に皇は台本通りに続く。


「噛まずに言えるか?」


あの日のように、とお前は言いたいんだろ?


私もこの話を引き受けた時にそれだけが心配だったさ。


だけど、今はそんな事よりもお前に仕返ししないと気が済まないという考えでこっちはいっぱいなんだよ。





ほんと、覚悟を決めた人間というのは怖いよな?


こちらを向く皇の顔に両手を添える。


驚いたように目を見開く皇。それでも私は止まらない。


そのまま真っ直ぐ、


────────自身の唇を皇の唇の元へと寄せた。








『今度は私から、です。・・・私も愛しています』


体を離し最後の台詞にアレンジを入れ口にすれば先程よりも大きな歓声と悲鳴に体育館を包まれる。


それもそうだ。今回は先程のようにキスを避けられるような構図ではなく、客席側に私の後頭部が見えるような立ち位置。


正面から口付けしたように見えたのだろうから。


「えっ!?えっ!お二人って!?」


「幕!下げて下げて!」


「このまま劇を終えたら完璧よ!」


お互い向き合ったまま幕が下がり終えるのを待つ。


『以上、2年A組で白雪姫でした』


「えっと、その、・・・お、お二人でごゆっくりー!!!!!」


幕が閉じた事を告げるアナウンスが流れると神父役の男子生徒は慌ててこの場から離れて行ってしまう。
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