私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
「───────どいて」


「なっ、ましろ!?」


お互いに出方を伺い沈黙が続く中に聞こえてきたましろちゃんと龍二くんの声に屋上の網へ何かがぶつかる音。


壊れてしまったんじゃないかと心配になる音。必然的にこの場に居る人達はそちらへ視線を向けることになるわけだけど、あたしは言葉を失わずにはいられなかった。


「ぐッは、!」


お腹を蹴られた衝撃で戻してしまったのか蹲りながら咳き込む男の人。


ましろちゃんは静かに男の人の元へ近づき躊躇なく後ろ髪を掴んでみせたかと思えば、そのまま何度も。何度も。





コンクリートの地面へその頭を打ち付けはじめた。





「!?」


形容しがたい音が屋上へ響き耳を塞ぎたくなった。だけどそれは許されないような気がして黙って残酷な光景を目に焼き付けるしかなかった。


「だッ、やめっ!・・・やめでッッ!やめでぐだッ、」


必死の命乞いにピタリと動きを止める。


「お前ら、あの場に居た連中だよな。まだ遊び足りなかったか知らんがこれをのぞんでいたんだろ?」


いつもと違う口調で不思議そうに首を傾げるましろちゃん。


それは一緒にいて気付いたましろちゃんの癖。


可愛いと、いつもなら感じるその仕草もこの場で何故できるのか理解ができない。
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