私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ








「あーあー、やっぱこうなる。派手にやってんねー」


場違いな声が後ろから入り、全員が固まる。


(なんで・・・?)


それはどんなに呼びかけても止まってくれなかったましろちゃんも。


「うわ、すっげ。何これ」


ここに居る皆の視線を集める当の本人は、元の面影もなく顔面が潰れた人をうげっと口にしながら蹴りあげる。


こちらに近寄る男の人に朔夜くんは、


「・・・誰だお前」


と問うけれど完全に無視。


伸びた赤髪を一括りにしながら煙草を吹かすこの人はあたし達の目の前にやってきて、ましろちゃんの顔を覗き込むようにしてじーっと見つめる。


ましろちゃんは何故か無抵抗でそれを受け入れてる。


・・・顔は凄く不機嫌そうだけど。


「はは、随分機嫌悪ぃじゃん」


そう言いながら、この人は気怠そうに頬杖をつく。


その姿に警戒を強めた朔夜くんがましろちゃんを押さえたまま低く言った。


「おい、近づくな」


「んー? 別に噛まねぇだろ、多分」


な、なんなのこの人。


無責任さを感じる言動にあたし達は困惑するけど、


この人が現れた瞬間、ましろちゃんの荒かった呼吸が一瞬だけ揺らいだのは確かだったから。


今だってあれだけ暴れていたましろちゃんが、この人を前にしてだけ抵抗を弱めている。
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