私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
「皆と何を話してたんですか?」


玄関から門までの道を横に並んで歩く。


この距離だから日傘は持ってこなかったけど薺さんはこの後大丈夫なのかな・・・。


「えーっとね、君の自慢話」


「そうですか」


「あれ、納得してない感じ?」


「分かってるなら聞かないでくださいよ」


この人はよく揶揄うんだから。


こういった話ができるようになったのは良い事だと思い自分に言い聞かせる。


「ここまでで大丈夫だよ」


「薺さんはその、この後・・・」


「うん、あそこに寄ってから帰るよ」


薺さんは悲しげに笑う。そんな顔させたかった訳じゃなかったのに・・・。


ただ私はあそこに行けないでいるから。


「そんな顔しないで?いつか二人で行こう」


「・・・はい」


返事をした私の頭を満足気に撫でて薺さんは門の先へと歩いて行った。











場所は夏休みで誰も居ないはずの学校へ。


「校内の案内はこんなもんかしらね。それじゃぁ9月からよろしく」


「ん、よろしく。ありがとうねヒメ」


(はぁー、ましろになんて言われるかしら)


ヒメと呼ばれた女性は先程まで話していた人物を気まずそうに見つめる。


当の本人は気にする様子も見せずに校舎を眺めていた。





「──────やっとご主人様に会える」
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