私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
「うひょ〜!いっぱい食べるどー!!」


「食べ過ぎたら帯キツくなるわよ?」


「大丈夫!その都度着直すよ!!」


親指を立てながら輝かしいほどの笑みと瞳を浮かべる優里。


お家が美容院を経営してることもあってか着付けは問題なくできるらしい。といってもそこまでして食を追い求めるのかという驚きが勝ってしまうんだが。


「優里さんのこれは毎年恒例ですからね。慣れてください」


毎年出店大食い選手権してるのかこの子は・・・。





若干引きそうになりながら優里の行きたいお店についていく。


焼きそば、たこ焼き、唐揚げ...食べ物だけで10店は巡ったと思う。


「前回は大食い大会を売りにしてた出店が何個かあったのに・・・」


「ゆうちゃんが全部の店で赤字レベルで食い尽くしちゃったし今年は止めたんじゃない?」


お、恐るべし優里の胃袋・・・。





この時にはもう日はすっかり沈み暗くなっていた。


「取れねー!」


「うわっ!また破けた!」


「・・・」


「ヤメテ・・・、モウヤメテ・・・」


金魚救いに苦戦する瑠璃川と水嶋の横で黙々とすくい上げる谷垣というなんともシュールな絵面を私たちは見守っていた。


動物だけでなく生き物全般が好きらしいからそれが発揮されてるんだろうか。店主の悲痛な訴えは聞こえないようでなんとも可哀想である。
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