私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
私が呑気にそんな事を考えてるとも知らず目の前の女は大きく腕を振りかぶり私はそっと瞼を閉じる。





パンっ、





・・・音は確かにしたのに一向に痛みは届かない。


女達の声も聞こえないため恐る恐る目を開ける。


「・・・瑠璃川」


そこには見慣れた背丈の少年が庇うようにして私の前にいた。


なんでここにとは言わない。こんだけ騒げば嫌でも目立つだろう。


「ふ、文さん・・・、」


「なんでここにっ」


「お前ら誰だよ。ここでこいつに何しようとしてた?」


以外にもその声は冷静でこちらが驚いてしまう。


それだけで効果があったのか3人は人混みの方へと逃げていった。


「来てくれたのは助かったけど、大丈夫なの?」


案の定その顔を覗き込めば頬は若干ではあるものの赤く腫れており、冷や汗を浮かべている。


「だ、いじょうぶ」


「嘘つき」


震える手を掴んで先程休憩をしていた場所に移動をする。この手を振り払われる心配があったがそこは問題ないみたいで一安心する。


ひとまず座らせて水や何か冷やせるものがないか探そうと立ち上がるが袖をつかんで許さない。


「すぐ戻ってくるから」


「いいっ、前みたく酷くないからッ。傍居て・・・」


確かにあの時よりかは軽いかもしれないが・・・。


「・・・」


ひとまずその言葉を信じる事にして隣に座る。


「無理に来てくれなくてよかったのに」


違う、こんな事が言いたいんじゃないのに。


「お前っ、殴られるつもり、だったろ。そんなとこ見たら誰だって止めに入るッ」


袖を掴む力がより強くなる。
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