私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
雪の降った次の日の話。


前の日はとーさんと会う予定だったのに珍しく来なかった。どんなに忙しくても連絡はくれるのに。


とーさんを遅い時間まで起きて待ってたからこの日はいつもより遅く起きた。


今日が休みでよかった。落ちそうになる瞼を擦ってかーさんの居るリビングへと向かう。


「おはようかーさ、」


「死んだ。あの人が死んだ。あの女のせいで。あの女を連れて車で事故るなんて。・・・私からどれだけ取れば気が済むのよッ」


そこには長い爪をボロボロにしながら床を睨みつけ、涙を零す母の姿があった。


死んだ?誰が?


それにあの女って・・・、


かーさんの言葉を理解しようにも上手く出来なかった。それ以上にかーさんを怖いと思ってしまった自分が嫌になる。





その後滅多に会わない親戚が家に来た。


冷静ではない母とどうする事もできない子供の俺。そんな様子を見て気まずそうに母の背中をさする。


それから俺達は親戚の家に一時的だがお世話になる事になった。こんな精神状態の母を放置する事が出来なかったらしい。


俺達二人を腫れ物のように扱う生活を嫌でも憶えてる。


「ひさのりさん、さくらさんを連れてあの子を引き取る話をしようとしてたんですって」


「可哀想に。あの子、誕生日に父親を亡くしたわけでしょ」


引き取られた日の夜。大人達がそんな会話をしているのが聞こえてそこであの日がおれの誕生日だったということに気付いた。
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