私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
とーさんの知人に聞いた話だけど両親は幼馴染で学生の頃から付き合っていた誰が見ても羨むような人達だったという。


しかし、結婚後変わったのはどちらの方なのか。俺が産まれる同時期から二人の関係は良くなかったという。


両親は離婚して父は早々に家を出て新しく愛する人を作ったらしい。それでも俺はとーさんも好きだった。


会う度におれのこと愛してくれてるんだなって伝わったから。


月に一度とーさんに会える日のいつだったかにその相手を紹介してもらったことがある。


「はじめまして。さくらです」


鎖骨まで伸びた髪を揺らしながら挨拶したその人はとても優しそうな人だった。


この日はさくらさんも一緒に遊んでくれた。遊園地の帰りにファミレスに寄って食事をする。


いつも食パンしか食べれないからとーさんとの食事は楽しみだった。


「ねぇひさのりさん、やっぱり文くんは同年代の子と比べてあまりに小さくて細いわ。こんな歳の子が受けていい環境じゃないわ」


とーさんに呟くさくらさんは悲しそうだった。


「うん。やっぱりこの子は俺が引き取りたいと思うんだ」


小さかった俺はその会話の意図を汲むことが出来なかった。
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