俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
(まずい)
心の中の恋愛エリアに繋がる扉は今は硬く閉ざしている。それを鍵も持たずに開けられそうな気がして焦り、慌てて目線を下げた。
ガラスの天板に映るのはシャンデリアの明かりとコーヒーを飲む黒見の顔だ。
形のいい唇がコーヒーカップから離れると、片側の口角がニヤリとつり上がった。
(まさか、これって作戦?)
急いで視線を黒見の顔に戻したが普通の表情なので見間違いだったのかもしれない。
「なんだ?」
「い、いえ、夕食はどうするのかと思いまして」
「十九時にルームサービスを頼んでいるが、腹が空いたならそこにあるのを摘まめばいい。冷蔵庫にもきっとなにか入っている」
ダイニングテーブルの真ん中に三段のティースタンドがあり、小さめのサンドイッチやケーキなどが美しく贅沢に盛りつけられている。
これがサービスに含まれているとは驚きで、この部屋の宿泊料金は恐ろしくて聞けない。
(泊まると宣言したあとだし、あれこれ考えても仕方ないか。うん、楽しもう)
さっぱりして前向きだと美波に褒められた先月のランチを思い出した。
こういうところがそうなのだろう。
(考えなし、という言い方もあるけど。まぁ、いざとなればハイキックをお見舞いすればいいか)
黒見がティースタンドを梨乃の方に寄せてくれたので、遠慮なくケーキに手を伸ばした。
それから数時間が経ち、時刻は二十二時半だ。