俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
「そうだったわね。ごめんなさい。最近、忘れっぽくて嫌になるわ。今朝はベビーシッターがなかなか来ないと思ったら、予約し忘れていたのよ。代わりを探して朝から大忙しだったわ」

スコットの家族の話は昨日、少し聞いていた。忘れっぽさと今朝のバタバタを笑って話してくれた彼女は、「またどこかで会いましょう」と言って仕事に戻っていった。

(私も視察に意識を向けないと)

そう思うのにこの場から動けない。どうしても気になって振り返ると黒見の元上司の姿はなく、今は娘とふたりで話していた。

彼女の手が黒見の腕に触れていてさらに動揺する。

(か、関係ない。他人の恋路とかどうでもいい)

目が離せないのはどうしてなのか。

その時、黒見が制するように片手を軽く上げたのが見えた。声は少しも聞こえないが彼女の方は引き留めているような雰囲気で、それを断ったのではないだろうか。

踵を返して歩き出した黒見を見送っている彼女は、首を横に振って残念そうな様子だ。

スコットから話を聞いたせいかもしれないが、彼に未練がありそうな気がした。

(黒見CEOは視察中だから話を切り上げたのかも。もし仕事中じゃなかったら、どういう対応をした……?)

梨乃を見つけた様子の彼が、人混みを縫うようにして目の前まで来た。

「そんなところに突っ立ってどうした?」

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