俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
ノートパソコンを閉じて軽くメイク直しをし、ハンドバッグに携帯や財布など必要なものを入れてコートに袖を通した。

寝室のドアを開けると、隣の部屋から黒見も出てきた。

着替えた彼に息をのむ。

フォーマルに近いスリーピースの黒いスーツで、襟の生地だけ光沢があった。ポケットチーフとネクタイは青だ。

いつもは額を斜めに覆っている前髪がヘアワックスで後ろに流されていて、形のいい額が男の色気を醸し出していた。

長身で程よく筋肉質の彼にめかし込まれると勝手に鼓動が高まるが、目を奪われたあとには不安になる。

(私が隣を歩いていいの?)

彼の引き立て役にならなれそうな気はするが。先ほど黒見が言ったこととは別の理由で、梨乃もドレスの購入の必要性を感じた。

ホテルを出てタクシーで五分ほど移動し、ブティックの前に到着した。

「ここって……」

降車してブランドのロゴが目に入った途端に足がすくんだ。

世界ナンバーワンと言っても過言ではないハイブランドのテナントだったからだ。

学生の頃は大人になったらこのブランドのものを身につけたいと憧れていたが、社会人七年目の今でも持っていない。少々無理をすれば高級バッグのひとつくらい買えるけれど、自分には似合わないと思っていた。

(背伸びしてる気がして諦めたんだっけ。二十九歳になっても、まだそんな気分)

「どうした?」

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