俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
わざと素っ気なく返し、熱い眼差しから顔を逸らした。

恋が始まらないように自分の気持ちを制御するのに精一杯で、何度も断られる彼を思い遣る余裕はなかった。



翌日の十時半、梨乃はホテル前のロータリーでタクシーに乗ろうとしていた。

これから空港に向かうのだが、今日の帰国は梨乃だけで黒見はもう一泊する予定である。

二時間ほど前に『気をつけて帰れよ』と言って彼はクライフビルに出かけていった。今頃はなにかの会議に出席しているはずだ。

それなのに隣に止まったタクシーから黒見が降りてきたので目を瞬かせた。

「間に合った」

「もしかして見送りに戻ってくれたんですか?」

「ああ。空港まで行く。あと一時間は一緒にいられるな」

サラリとした口調だが、梨乃の胸をときめかせるには十分な台詞である。

(喜んじゃダメ……)

恋心に繋がる扉が開かないよう意識して押さえている状態だ。あまり思わせぶりなことを言わないでほしい。

「わざわざありがとうございます」

そっけなく返し、熱くなる顔を見られないようにタクシーに乗り込んだ。

後部席に並んで揺られ、冬景色のビル群を眺めながら空港へ向かう。

十分ほど走って信号待ちで止まると、横道の沿道でキッチンカーが営業しているのを見つけた。

(あっ、ホットドッグ。食べられなくて残念)

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