俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
「それでいい。プライドは高く持て。自分の価値を信じるんだ。いい加減な男はこっちから願い下げだと言ってやれ」

横顔を見せた彼が、エレベーターホールの方へと引き返していく。

(もしかして、励ましてくれたの?)

突然のキスは、弱気になっていた梨乃を怒らせるためだったのかもしれない。

子供の頃から負けん気が強く、理不尽だと思えば年上の相手にでも食ってかかった。大人になるとさすがに喧嘩腰で言い返すことはしないが、反論はするため生意気だと思われがちだ。

そんな梨乃の性格を、彼はこの短時間で見抜いたということなのか。

スタイルのいい後姿が廊下の角を曲がって見えなくなった。

(プライドを高く持て、か。なんか少し、元気出たかも)

彼のように生意気な方の梨乃を評価してくれる人もいる。すべての男性が勇大のように可愛げを求めるわけではないのだ。

そう思うと傷ついた自尊心が回復し、しょげていた顔に笑みが戻った。

元彼の顔もふたりの思い出も薄れて気持ちが楽になり、フラれたせいで泣くことはもうない気がした。

(いい出会いだったかも)

よく考えると、ハッとするようなイケメンに助けられた上に唇を奪われるとはドラマチックだ。もっと胸を高鳴らせてもよかったのかもしれない。

彼とは二度と会うことはないだろう。

それを少しだけ残念に思いながら、カードキーを差し込んで誰もいない部屋に入った。


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