俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
梨乃の方に半分背を向けて頬杖をつき、もう一方の手には携帯を持っていた。耳にイヤホンをしていて動画を見ているような雰囲気だ。

小声でならこのまま電話していても迷惑にならないと判断し、勇大に言う。

「会うのは嫌だけど、この電話でなら話を聞くよ。手短にしてね」

『わかった。ありがとう』

手短にと言ったのに、なかなか長い話だった。

要点だけまとめると九州支社の後輩女性に惹かれたのは気の迷いで、二股をかけられて幻滅してから梨乃への真の愛情に気づいたそうだ。けれども自分には連絡する資格がないと思い、会いたさを堪えていたという。

そんな時に仕事でまた縁が繋がって、これはもう必死に食らいつけというなにかの教示だと感じたそうだ。

『梨乃を愛してる。二度と傷つけないと誓うから、俺とやり直してほしい』

(本当に勝手な人)

込み上げる怒りと呆れをなんとか抑え、声を落として拒否する。

「復縁は無理。結婚目前で婚約破棄するような人を信じられないから。それに私、今好きな人がいるの。だから諦めて」

電話口で息をのむ音がした。ショックを受けているのか三秒ほどの沈黙があり、気落ちした声で聞かれる。

『新しい彼氏ができたということ?』

「片想いだけど……」

交際していると嘘をついた方がすんなりと諦めてもらえたかもしれないが、黒見に失礼な気がしてできなかった。

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