俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
「秘書の五ノ森です。すみません、声をかけない方がいいと思ったのですが、電話が聞こえて気になってしまいました」

(マズイ……)

黒見に報告されるのではないかと一瞬焦ったが、よく考えると平社員の恋愛事情をCEOに伝えようと思うわけがない。

なんとか心を落ち着かせ、ぎこちない笑みを浮かべた。

「おくつろぎのところ、隣で長電話をしてすみませんでした。五ノ森さんは誰かとお待ち合わせですか?」

退勤後に食事処ではなくカフェにいる理由を推測して問いかけた。

「ええ。妻の仕事が終わるのを待っています。今日は外食の約束をしていまして」

この近くにあるふぐちりの有名店に予約を入れているという。

(既婚者だったんだ)

前に会った時は気づかなかったが、左手の薬指にたしかにマリッジリングがはめられていた。

黒見と同じくらいの年齢に見えるのでなんとなく独身のイメージでいたが、三十代半ばなら結婚している人が結構いるだろう。

「ふぐちり、いいですね。奥様と楽しんでください。では私はこれで」

カフェラテはほとんど飲んでいないが、気まずいので席を立とうとした。

「どこへ行くんですか? 帰れないような話でしたよね?」

「は、はい」

(独り言までしっかり聞かれていたみたい。心配してくれているの?)

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