俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
(残念だと言われそうで怖い)

オフィススーツのスカートに置いている手が震えそうで、強く握りしめた。

うつむいていると、彼のため息が聞こえてさらに体を硬くした。

(ほら、やっぱり幻滅して――)

「俺は弱い女が嫌いだとも、強い女が好きだとも言った覚えはないが」

(えっ……そうだった?)

思い返してみれば、たしかに弱い女が嫌いだとは言われていなかった。

梨乃が生意気な言動を取ったりゴージャス美女に立ち向かったりした時に嬉しそうだったので、勝手に強い女性が好みなのだろうと思っていただけだ。

(でも、つまりはそういうことでしょう?)

「生い立ちや恋愛観を語るのは趣味じゃないが、聞いてくれ」

今度は彼の方が気まずそうで、目を合わせずに話しだす。

「俺の家族は母親ひとりだった――」

母親は未婚で彼を産み、父親が誰なのかは知らないそうだ。

定職に就かず遊び歩いて何日も帰宅しないような母親で、黒見の幼少期は常に空腹と寂しさの中にあったそうだ。

(ひどい……)

つい自分の生い立ちと比較してしまう。当たり前のように母がそばにいて、何不自由ない環境で食事が用意されなかったことはない。

それなのに兄弟とは喧嘩ばかりで、ひとりっ子の方がよかったと文句を言っていた子供の頃の自分がいかに幸せだったのかを思い知る。

この時点でかなり哀れんでいたが、まだ序の口だった。

< 194 / 238 >

この作品をシェア

pagetop