俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
黒見には婚約破棄された事情を知られている。アメリカ人男性に騙されかけ、酔っぱらって弱音を吐き、泣き顔まで見られた。

さらには、キスまで――。

(向こうだって気まずいよね?)

採用されたばかりで左遷されるのではないかと恐れた。

バリキャリで生きていこうとしているのに、出世コースから外されて地方の代理店勤務となるのは嫌だ。

恐る恐る後ろを振り返ると黒見の姿はもう見えなかったが、速い鼓動は鎮まらない。

(まさか、また彼に会うなんて……)

旧友との再会には運命を感じて喜べたが、黒見に対しては焦りしかない。

ひとり旅なんてするんじゃなかったと、今さらながらに後悔していた。



* * *



時刻は十一時二十分。黒見は自社ビルの最上階にある執務室に戻ってきたところだ。午前中は社内会議やミーティング五つに出席した。

そのように言うと忙しいと思われそうだが、それぞれ十五分程度の参加だ。

それだけの時間があれば、話し合いがどのように帰結するのか予想がつく。

黒見の考えと違うと思えば方向修正の指示を出し、問題がなければそのまま続けるように言って席を立った。

時間に追われるのは好きではない。自分の役割は舵取りで船を漕ぐのは社員だ。

クライフの米法人に一般採用試験で入社してから約十四年、ここまで上り詰めることができた理由は采配力だと自負している。

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