俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
安心してもらえるように明日のイベントは大成功で終わらせなければと思いつつ、彼の胸に口づけて梨乃も眠りについた。



* * *



翌日、黒見はロンドン・ヒースロー空港行きの飛行機で飛び立った。

離陸から一時間ほどが経ち、日差しの入る窓の下には雲海が広がっている。

ファーストクラスのシートに座りながらノートパソコンで交渉相手の資料を読み直していたのだが、どうしても頭に浮かんでくるのは今頃会場で奮闘している梨乃の姿だ。

(きっと大変ささえ楽しんでいるだろう。俺がいなくても梨乃なら大丈夫だ)

信頼できる女性に巡り合えた運命に感謝している。

そのおかげなのか最近は悪夢を見なくなった。

以前、たまに見ていた悪夢のひとつは鳥になった自分が飛べなくなって海に落ちる内容で、もうひとつは子供の頃の実体験だ。

母親はいつも交際相手に夢中で、自分の子の目の前で情事に及ぼうとしたり甘えた声で金銭をねだったりするような人だった。

今も母親に会おうとは思えないが、憎しみで心が乱されることはなくなった。

長年、苦しんできた負の感情が軽くなると、仕事への活力も安定して湧いてくるような気がしていた。

(梨乃のおかげでこれからも飛べる。逆に言えば、手放したら俺は墜落するかもしれないな)

そんなふうに思うほど、梨乃は欠かせない存在になっていた。

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