俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
先導する彼の後ろを無言でついていく。他のフロアとは違って静かな廊下を進む間、鼓動がどんどん速まるのでなんとか落ち着こうとしていた。

(仕事でミスしたわけじゃないから縮こまらなくていい。今後もマーケターとして働きたい気持ちはしっかり伝えよう。それでも異動を命じられたら、ガツンと言ってやる。気まずくなるような行為をしたのは黒見CEOの方だって)

励ますためのキスだったとわかっているが梨乃は許可していないので、非があるとすれば彼の方だ。

「こちらです」

秘書が足を止めたドアは重厚感のある木目で、小さな金のプレートに英語のスペルで黒見と書かれていた。

怖気づかないように意識して背筋を伸ばす。

硬い表情の梨乃をチラッと横目で見た秘書がアをノックした。

「五ノ森です。マーケティング部の宮内さんをお連れしました」

「入れ」

緊張しながらドアの内側へ足を踏み出す。

「失礼いたします」

黒見は部屋の右奥にある執務机に向かっていた。

涼しげなのに力強い目。印象的に記憶に残っているその目で射るように見られ、心臓が大きく波打った。

(怒っているのか普通なのか、わからない)

表情から機嫌を探りたくても、それがわかるほどまだ彼を知らない。

「宮内はこっちに。五ノ森は戻っていい」

(えっ……)

引き留めたい思いで秘書の方に振り向いたが、一礼した彼はさっさと出て行ってしまった。
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