俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
意思まで奪われてはたまらないので、顔を背けて彼を見ないようにした。

「そういうのは困ります」

「なるほどな。これで最後の懸念は消えた」

(懸念って?)

なにに納得されたのかわからないが、顔の横から腕が外された。

さらには「戻っていいぞ」と淡白に言って背を向けられ、ポカンとした。

(待ってよ。なにがしたかったの?)

左遷や退職勧告ではなく、ニューヨークでのキスの口止めでもない。

それどころかまたしても迫ってきて、梨乃が拒むとなにかに納得して急に素っ気ない態度を取る。

(なにこれ。嫌がらせ?)

あまりにも訳が分からないので、梨乃を翻弄して楽しんでいるのかと腹立たしく思った。

執務机に戻ろうとしている広い背中に呼びかける。

「お待ちください。どうして私を呼んだんですか? 黒見CEOのご用件がわからず、少々混乱しております」

五歩ほど離れた位置で足を止めた彼が、顔だけ振り向いた。

怒りを込めて強気な視線をぶつけているのに、なぜかフッと微笑まれる。

「偶然にしてはできすぎていると思い、お前を疑っていた。ニューヨークで俺に助けさせたところから入社しての再会までに、企みを感じたんだ。俺は敵が多い。過去には失脚を図られたこともあるから懐疑的になる」

(つまり、台本ありきで私が出会いから仕組んだと言いたいの?)

腹立たしさを忘れるほど予想外の呼び出し理由だ。

< 44 / 238 >

この作品をシェア

pagetop