俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
梨乃は平凡な家庭で生まれ育ち、社会人になってからもごく普通に暮らしてきた。唐突に婚約破棄されたのだけは珍しいのかもしれないが、それ以外はどこをとってもよくいるような一般人だ。

それなのに彼の中では悪の組織のエージェントになっていたらしい。

(こんな言い方をするのは失礼だと思うけど、中二病?)

創始者一族ではないのに若くしてこの地位を得た凄腕だと聞いている。

同年代にはない貫録や威厳のようなものを感じるし、王者の風格も醸し出しているが、実際のところはどうなのだろう。

少年漫画の読みすぎではないのかと言ってやりたい気持ちだが、末端社員の立場は忘れていない。

「お疑いの理由はわかりました。できすぎと仰いましたが本当に偶然なんです。前職も保険会社でマーケティングの仕事をしていました。その経験を生かせると思い、こちらの会社を選びました。それ以外の意図はありません。ニューヨークで助けていただいた日本人男性が再就職先のCEOだと知ったのは先週です。私も大変驚きました」

「ああ。今はもう知っている。悪いが宮内について調べさせてもらった」

(調べた?)

廊下ですれ違っただけの再会から呼び出すまで一週間かかったのは、そのためだったのだろうか。

調査されて困るような人生は送っていないが、容疑者扱いされた気分で不愉快だ。

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