俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
「お調べになられて嫌疑が晴れたということでしょうか。それでしたら、こうして呼び出す必要はなかったように思いますが」

「別の疑いが残っていた。それを確かめるために呼んだんだ」

思わず梨乃が眉根を寄せると、黒見が体ごとこちらを向いた。

距離が離れているのに気持ちだけは身構えてしまう。

「出会いは偶然。前職が保険会社だというのも偶然の一致。だが、保険会社が多数ある中で弊社を選んだ理由が、俺に近づくためだという疑いは残されていた。恋愛目的で近づいてくる女はうっとうしい」

つまりニューヨークで黒見を好きになった梨乃が、この会社の経営者が彼だと知って恋人関係を夢見て入社してきたと疑っていたようだ。

だから先ほど、二度目のキスを想像させるような真似をしたのだろう。

梨乃が拒まなければ、やはり恋愛目的で近づいてきたのかと判断されたということだ。

その結果は地方の代理店への異動辞令だったのかもしれない。

(勝手に疑って、勝手に試して、勝手に安心して。この人、いくらなんでも失礼すぎない?)

思わず心の声が口から漏れた。

「自意識過剰でしょ」

(しまった……!)

黒見は眉ひとつ動かさず、一見するとなんとも思っていない様子だ。

それがかえって怖い気もしたが、この際だからと言わせてもらう。

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